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鼡径部や腹壁のヘルニア(脱腸)

1.鼡径(そけい)ヘルニアについて

 「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置から逸脱(はみ出)した状態をいいます。「鼡径ヘルニア」とは、足のつけ根の部分(=鼡径部)に、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、筋肉の間の穴から皮膚の下に出てくる病気のことで、一般には「脱腸(だっちょう)」と言われることが多いです。

鼡径ヘルニアの状態(ヘルニア倶楽部ホームページより)


2.症状について

 排尿時などお腹に力を入れた時や、立ち上がった時などに、鼡径部が腫れたりします。初期には、普通は上から押さえることで元に戻ることが多いです。そのまま放置をすると、徐々にその穴が大きくなり、腸などの臓器が脱出してきて、痛みなどを伴ってきます。腫れが戻らなくなったり、お腹が痛くなったり、吐いたりした場合は、嵌頓(=腸がはまり込んだ状態)といい、緊急手術を要することになります。鼡径ヘルニアは、小児の病気として知られていますが、成人(特に高齢者)でも多くに見られる病気です。「鼡径部の腫れ」を認めた場合には、外科を受診してください。小児の鼡径ヘルニアは当院小児外科にて対応させていただきます。

 診断は、診察の所見および当科ではCT検査を行って、ヘルニアの有無を確認しています。確定診断され、手術が決定した場合には、術前検査として血液検査・尿検査・心電図検査・レントゲン検査を受けて頂きます。また、他の疾患(例えば心臓病や糖尿病)があり治療継続中の場合は、手術時の注意事項の確認や、特殊な薬剤を服用中であれば、中止可能かどうかの確認が必要になります。


3.治療方法

 成人の鼡径ヘルニアと診断された場合、根本的な治療方法は手術治療となります。当科では、原則全身麻酔にて手術を行っていますが、全身状態を考慮して局所麻酔で行うこともあります。嵌頓に至っていない場合には、日程を調整して手術日を決定します。手術日は、月/木/金曜日になります。手術方法には、@腹腔鏡下手術とA前方切開法があります。それぞれに長所短所がありますし、腹部手術歴などによっては@あるいはAの適応とならない場合もありますので、主治医と相談して決定して頂くこととなります。入院期間は、手術前日あるいは当日入院を原則とし、いずれも術後3-5日にて退院が可能となります。

【当科での年次別症例数の推移】

@ 腹腔鏡下手術について

 腹腔内に腹腔鏡を挿入し、さらに鉗子と言われる手の代わりとなるものを挿入するポートを数個腹壁に挿入して行います。メッシュを用いて鼡径部腹壁の補強をします。術後の痛みや不快感が少なく、創部も小さくすることが可能な手術とされ、当科でも2014年より導入し、現在では半数以上を腹腔鏡下手術にて行っています。手術時間は1時間前後です。

A 前方切開法について

 鼡径部の腫れている付近を、4-5cm大に切開して行う手術方法です。以前は、弱くなった組織を縫い合わせることで穴を閉鎖していましたが、緊張が掛かることで違和感が強く、また再発例も多く見られました。現在では、その欠点を補う目的として、補強の人工膜シート(メッシュと言われるもの)を用いて修復しています。自分の組織を縫縮しないことで、緊張が掛からず痛みが少ないのが特徴です。また、再発率が以前の方法に比較して少ないとされています。当科では、リヒテンシュタイン法および腹膜前腔修復法を採用しています。手術時間は30分から1時間程度になります。


4.術後および退院後について

 手術後は、クリニカルパスに沿って経過を見ていきます。翌日から食事も開始となります。手術翌日から体調に合わせてそれまでの生活を行っても結構です。退院後も、仕事も体調に合わせて始めて頂きます。激しい運動や筋力トレなどは、術後4週間後くらいを目安に身体の調子に合わせて始めてください。