フォトンカウンティングCT
フォトンカウンティングCT(Photon-Counting CT)
当院では、2024年9月より次世代型CT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」(シーメンスヘルスケア株式会社)の稼働を開始しました。
日本国内では14台目、石川県内では初の導入となります。
【従来のCTとの違い】
CT検査というと、私たちの体を輪切りしにしたような画像を思い浮かべると思いますが、この画像を作るために、従来のCTではX線を体に照射し、体内を通過したX線を検出器で捉えていました。そして、この検出されたX線情報から、コンピューターで画像を再構成して表示していました。
CTが臨床導入されてから約50年が経過し、これまでは搭載するX線検出器を増やす「多列化」が進んできましたが、原理のレベルでは20年以上、革新的な進歩がなかったのが実情です。
フォトンカウンティングCTは、このX線の検出方法が大きく異なる点が特徴です。従来のCTではX線をまとめて捉え、その量を測ることで画像を作っていましたが、フォトンカウンティングCTでは、X線を構成するひとつひとつの光子(フォトン)を数えることで、より詳細な情報を取得することができます。
【フォトンカウンティングCTのメリット】
1.高画質
高い空間分解能:より小さな組織や構造を識別できるため、より詳細な画像が得られます。
高いコントラスト分解能:組織間のわずかな濃度差を捉えることができ、より鮮明な画像が得られます。
2.低被ばく
従来のCTと比較して、少ないX線量で高画質な画像を得ることができるため、患者様の被ばくを低減できます。
3.物質弁別能の向上
X線エネルギー毎の情報を詳細に取得できるため、異なる物質を区別しやすくなります。これにより、より正確な診断が可能になります。
4.高速スキャン
高速なデータ取得が可能になり,検査時間を短縮できます。
【フォトンカウンティングCTがもたらす医療への貢献】
これらのメリットからフォトンカウンティングCTは、様々な分野で医療に貢献することが期待されています。
- がんの診断:より早期に小さな腫瘍を発見したり、腫瘍の性質をより詳しく調べたりすることが可能になります。
- 心臓疾患の診断:心臓の動きや血流をより詳細に観察でき、心臓病の診断精度が向上します。
- 神経疾患の診断:脳の微細な構造を詳細に観察でき、神経疾患の診断に役立ちます。
- 肺疾患の診断:肺の小さな結節や、肺気腫などの病変をより詳細に観察することができます。
【まとめ】
フォトンカウンティングCTは、従来のCTの限界を超え、より高精度で安全な画像診断を実現する画期的な技術です。この技術の進歩により、より早期に病気を見つけ、より適切な治療を行うことができるようになるでしょう。
【補足】
フォトンカウンティングCTは、まだ導入されている医療機関が少ないですが、今後ますます普及していくことが期待されています。
具体的な診断や治療については、医師にご相談ください。
【専門用語解説】
空間分解能:画像の中で、どれくらい細かい部分まで区別できるかを示す指標です。
コントラスト分解能:画像の中で、濃度の異なる組織をどれだけ鮮明に区別できるかを示す指標です。
物質弁別能:異なる物質を区別する能力のことです。
フォトンカウンティングCTの画像
【冠動脈CT】
従来CTと比較し、ステント内部を鮮明に描出します
【中内耳CT】
従来CTと比較し、高精細に描出します
【高速スキャン】
息どめのできない患者様でも動きのない画像が撮影できます